きものブレイン様 見学レポート

平成29年9月11日に株式会社きものブレイン様へ訪問しました。
新社屋が完成したということで、インターネットにある地図にはまだ記されていない場所へ移動したところ、綺麗にデザインされた建物が現れました。駐車場に車を止めると、駐車場には雪解けの散水設備があり、夜間駐車場を照らすライトも完備され、雪深い新潟県十日町の事情と、従業員への配慮を社屋へ入る前から感じます。

社屋へ入り、説明を受ける場所では天井から着物の絵柄のサンプルがたくさん吊り下げられており、これだけで着物への興味がわいてきます。見せ方が素晴らしいと思いました。
会社説明は岡元松男社長が自らしてくださいました。

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振袖などの着物業界は、着物自体が着られなくなっていくに従い衰退しており、その中で業界全体での会社倒産や従業員のリストラを見て来られた中で、社長は人員整理をしない経営をしようと思われたそうです。大前提として会社の継続があり、従業員を大切にしようとする考えが、そこで生まれているとすれば、そのような悲しい現実を見ないと身に沁みないのかもしれませんが、今後の経営者の多くに経験者が伝えることで学び、その価値観と考え方を継承していただけるとよいのではないかと思いました。

岡元社長は着物を売って終わりを基本とする過去の着物業界の中で、顧客の声や着物をもっと来てもらいたいとの思いから着物のアフターケアをスタートされました。これに対して地元の着物業界の重鎮からは「そんなことをしたら着物が売れなくなる」と言われ、「きものは着ず、箪笥の中に置いておくだけで顧客は満足しているのだからそれでいい。『お』きもの(置物)だ。」との言葉に反発された話から、社長の中にある信念を感じます。

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岡元社長自身「考えることが趣味」「ずっと考えている」の言葉にあるように、どうすれば着物を着る人が喜ぶか、着物を着る人が増えるだろうか、そして自社の繁栄になるだろうか、と考え、実行されてきた様子がうかがえました。
その中で、今回目立ったものは「みどりまゆ」という「まゆ」の開発です。これは大学との連携によって絹を作る蚕の育て方を改良し、蚕繭一つからの絹糸の生産量を増やし、質も良くなる方法を確立されたものでした。これを基にシルク衣類、石鹸類、健康サプリメントと商品類が広がり、新たな展開を見せています。

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更に、十日町をきものの街にしようと考え「きもの文化村」構想を思い付き、岡元社長みずからの退職金をつぎ込んで着物に関する施設を点在させ、全国から着物に関わる人々が集まるように村を作ろうとされています。

このように着物業界の常識を打ち破るイノベーションをされてきました。しかし「常に考えている」社長の視点は、その次へと向かっています。事業承継です。
今までの話から社長の発案から副社長の奥様を中心に従業員が現実にするために努力してきたワンマン型の経営をされてきた様子でしたが、今後は「全員参加の経営を目指す」とされ、衆知を集め、また会社自体が大きくなり、部署も多くなっていく中で、自律した部署、組織が、自ら考え行動する形での経営へシフトするように動いています。
工場の見学させていただいて従業員の仕事一つ一つが専門的で職人的な面があると分かりました。従業員は職人として研鑽していく必要もありますが、全員参加の経営には、同時に従業員同士の相手への理解、組織への理解が必要となります。そのために5S、VM(ビジュアルマネジメント)や盛和塾から学ばれたフィロソフィー、アメーバ経営を実践されています。
私はこれに加えて障がい者雇用も含めて良いと考えています。きものブレイン様では障害者支援委員会を設置されています。1チーム5人の5チームで25名が委員として活動し、1年で交代することによって、数年で全員が委員として活動することになります。これにより障がい者への理解から同僚への思いやりが深くなり、障がい者雇用をするために、どのように仕事を切り分けて仕事を作り出すか、といった仕事自体への理解も進み、非常に効果的な取り組みだと思います。
障がい者雇用と表現せず「ダイバーシティ企業(多様な人材が活躍できる企業)」を目指しておられることも素晴らしく、障がい者ではなく個性として理解し、「差別はしない。区別する。」との考え方は正しいと思いました。「少数のプロより大勢の素人で」対応しようとする考え方も全員経営に繋がります。「あの仕事は私の仕事ではない」の反対で「皆で支え合っていこう」とする思想が社内に、更には文化村全体に、そして十日町全体に広がっていく、そんなイメージを受けました。

今回は訪問させていただき、ありがとうございました。
私は学生時代に新潟で過ごしましたが、雪深いイメージだけで十日町がこのような街とは知りませんでした。今回「へぎそば」も食し、少しだけ知る事が出来ました。また訪問したいと思います。

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