株式会社MOMIKI様

訪問日:2019年9月7日

宮崎県宮崎市にある株式会社MOMIKI様を訪問しました。

同社は主に、黒にんにくの製造販売をしています。詳しくは、にんにくを栽培し、収穫したものを熟成させて黒にんにくとして販売する、いわゆる6次化している会社です。以前は大企業の下請けとして機械工業製品の部品を生産する、社名も籾木工業という工場であったようです。しかし、大企業からの仕事が無くなった時点で、大きく方向転換し、農業・加工・販売へと商品変更と会社の形そのものの大改革を行って現在がある会社です。

会社が継続していくうえで、創業から長くなれば扱う商品を変える必要があり、変えなければ時代に合わなくなり衰退してしまいます。次の時代に合わせて変化するイノベーションについていける企業と、出来ない企業との差はどこにあるのでしょうか。イノベーションと表現してよいか分からないですが、同社はまさに畑違いの方向へと舵を切り生き残りました。

訪問した際、会社では地元向けのPRイベントを行っており、営業の得意な社長の籾木真一郎氏は販売に力を入れておられたので挨拶の後は施設見学をさせていただきました。

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会社には看板で大きく籾木工業とあり、実際には木工用刃物の研磨など以前からの仕事も継続されているため、実質的には2つの会社が重複しているようすです。社内に入り、黒にんにくの製造と加工・出荷現場を拝見しました。まずは白衣に着替え、髪を落とさないように白い帽子をかぶり、ほこり等を落とし、手を洗って中に入ります。手洗いは病院等で見られる蛇口を手ではなく肘で動かすものとなっており、使い方を知っていない参加者が手で開け閉めしていた点は、こちらで教える必要があったと思いますし、見学者への教育を行って衛生管理を徹底するとともに「衛生面で気を付けている」PRとしての教育としても効果があるように思いました。

現場ではにんにくを熟成させるステンレス製の窯をはじめに見ました、ちょうど一つの窯が空いており、その中で従業員が清掃をしていました。手に持ったブラシで丁寧に仕事をされている姿が印象的でした。施設説明をしてくださった専務のお話によれば、黒にんにくを扱うきっかけとなったのは、空いていた工場を活用しようと外部の方が黒にんにく製造用の窯を持ち込んで事業を始めたからであり、その方が事業に失敗したから手放した窯を使ってMOMIKIが事業を始めたとのことで、失敗を見ながら学んでいたのか、同社では事業として成立しているお話を聞きました。

黒にんにくの袋詰め作業ではパートアルバイトの従業員が、にんにく一つ一つを手で確認しながら異物混入しないよう気を付けて作業されていました。にんにく一片に時間を掛けるわけにはいきませんから、一瞬で判断している様子を見ていると、手作業の感覚の精密さに驚きます。以前訪問された方の感想として、以前よりも作業が早くなっているとのことで、従業員の仕事に対する姿勢を知ることが出来ました。従業員の女性に質問した際にもすごく親切で目をキラキラさせて元気に説明してくださり、会社のいい雰囲気を感じられました。

施設見学の後、籾木利彦専務取締役に会社説明をしていただきました。

専務は社長の弟様で役割としては、いわゆる工場長をされています。社長は海外への販路拡大のために海外出張による営業を担当されており、専務は会社内での業務のマネジメントや従業員のまとめ役をされています。

専務に業務改善の一環として机などの配置のレイアウトを1年かけて考えている件を尋ねると、業務改善全体のお話となりました。以前は女性が多い従業員のなかで良いアイデアがあっても否定が多かったことを反省し、今では意見に耳を傾けることが出来るようになっていること。少しの改良意見でも、実行できるか判断し、出来ないものは本人に十分説明し、出来るものは迅速に実行することで、皆が喜び、やる気になり、更に自ら提案していただけるようになった、とのことで委縮しない安心できる職場環境を育ててきたようです。女性が多く、多くは専務よりも年上の方々で、そのような従業員に対して伝えるべきこと、伝えないこと、自分の中で整理がついたころに自信がついて相手に対してしっかりと言えるようになったようです。また従業員の中には無理をしてしまう者もいるようで「会社の変化に対し、残ってくれた人には自分の体や家庭、仕事を大切にしてくださいよ。」との想いと声かけをされています。少々無表情に見える専務の優しい人柄が伝わってくるお話で、実際に従業員の皆さんに信頼されている様子がうかがえました。従業員の会社への信頼を専務が作り上げている部分が多分にあるように見受けられました。

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また専務から社長のお話を聞くと「尊敬している。ただ現実より速いペースで走る人なので、ブレーキを掛けさせてもらう事もある」として現実を見ている専務と夢を追う社長のバランスが良いこと、お互いの話を聞ける間柄が会社の強みであるようです。

そもそも、にんにく自体値段が高く、これを熟成する手間をかけると更に値段が高くなります。顧客にはこの熟成にんにくの価値を知ってもらい、適正な価格で購入していただかなければなりません。そのために理解ある顧客を開拓する必要があり、「日本国内外へと幅広く営業する社長」と、「従業員の組織感情を丁寧にマネジメントし会社を守る専務」のバランスで同社は成り立っていると言っても良いのではないかと思います。単純でありながら重要な点として同族経営のキモは仲良くすることだと思っているので、後述する懇親会での様子も含め、良い関係を知ることが出来てうれしくなりました。

夜には懇親会を開いてくださいました。お酒が入って籾木家の皆さん、従業員の皆さんの本音を聞くことが出来たとおもいます。しかし、本音が出たと言っても昼と同じであり、その内容を詳しく教えてもらえたと思っています。営業担当の大木さんは若手として営業の難しさを感じているお話が聞けました。研磨部署の長である鈴木さんは会長の研磨技術の凄さを語っておられ、尊敬されている様子が良く分かりましたし、食品事業部担当の古谷さんは失敗しながらも反省して一つ一つできるように頑張っているお話を聞くことが出来ました。周りからはムードメーカーとして愛されているとのことで、これを一例として、失礼かもしれませんが能力の秀でた人の集まりではなく、よい気質を持った人が残り、集まり、仲良くまじめに一つ一つ努力することで工場製品から農業への6次化転換を成功させ、現在に至っているのではないかと考えました。

最後に、籾木家の家長である会長の方言は私には聞き取りが難しかったですが、これも一つの良い経験として嬉しく思います。

今回は見学させていただき有難うございました。また皆さんにお会いできる時を楽しみにしています。

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