社会福祉法人太陽の家 様
訪問日:2019年9月6日
大分県別府市にある社会福祉法人太陽の家様へ訪問しました。
理念「No Charity, but a Chance!~保護より機会を~」とあるように、同法人では障がい者を過剰に保護することなく、健常者と同じように働き暮らすことが出来るよう就労の機会を用意し、住居が必要な者には住居を提供しています。
働く機会を用意するには仕事を探さなければなりません。太陽の家の理念に共感した企業を一つは協力企業として仕事を提供していただいており、もう一つは共同出資会社として太陽の家と企業が資本金を出し合って会社を設立し、障がい者雇用促進法による特例子会社としての形をとりつつ企業の仕事をされています。オムロン、ソニー、ホンダ、三菱商事、デンソー、富士通エフサス等日本を代表する大企業と提携するに至るには、その理念を企業に理解していただく必要があり、言い換えれば売り込む上手さであり、資料室を拝見し歴史を紐解くと創設者の故・中村裕(ゆたか)博士の存在が非常に大きいように感じました。「保護より機会を太陽を!」、「世に身心(しんしん)障害者はあっても仕事に障害はあり得ない」そして障がい者と健常者の境が無くなり太陽の家自体が無くなることを最終的な目標としてされていた、その想いと情熱、そして丁寧な伝え方が協力企業を増やし、現在太陽の家にたずさわる方々に引き継がれています。
中村裕博士の言葉
補助具
職場を見学しました。室内は明るく作業に適した光度、暑い中やってきた私たちからすれば気温湿度に気づかないほど適温であり、通路は適度に広く確保されており動きやすく、作業に不要なものはありません。今まで見てきた「いい会社」の中で工場をいくつか知っていますが、理想的な環境であると思います。仕事内容は掌より少し小さいプラスチック部品にさらに小さい様々な部品を取り付ける作業を拝見しました。ローラーによって手動で部品を流せる横一列に並んだ机があり、椅子に座って部品取り付けを行い、担当の部品取り付けが終わると横へ流していく形です。右手の不自由な方、左手の不自由な方、車いすの障がい者は見てわかりますが、それ以外の障がい者の方も様々に同じ職場で働いておられる様子で、障がいの部分によって得意な作業を受け持ってお互いに補う形で仕事をされているようです。また、時には体調不良による欠勤も考慮して、他者が仕事をカバーできるよう仕事内容を入れ替え、多能工化も普通に行われています。後の説明で知りましたが、見学者が来ることは朝礼等で事前に皆さんに説明されており、事前説明が無いと驚く人もいることがあることから、これも過去の経験から気を付けておられるようです。そのため、我々が見学で皆さんの後ろから見ていても、チラッと我々を見てニコリと笑って仕事に戻る姿も、このようなイレギュラーな出来事への慣れとしてクリアされている様子をうかがい知ることが出来ました。そして最後に本日の目標作業数のデジタル表示を見ると、目標数を超える仕事をされており、かなり効率的に仕事をされている事実も素晴らしく思います。
敷地内にある郵便ポストも象徴的で、投函口が車いすの手が届く高さに設置されており、これ一つとっても行政や設置業者への合意を得る必要を想像すると、その一つ一つを形にする大変さが分かり、このように積み重ねて出来たのが現在の法人の姿であるとして歴史を感じます。
今回、施設内の案内をしてくださった確かネパール出身だったと思います、カルキ・ビラムさん自身のお話も興味深く、太陽の家の近隣の大学に留学し、太陽の家を知り人の役に立ちたいとの想いで就職したことを語っていただきました。現在は研修生の受け入れを援助されており、太陽の家の理念は海外にも通じるものであることを実際に知ることが出来ました。
別府本部長の佐藤篤様、総務部総務課長の服部直充様にお話を聞きました。
最も意外であったのは太陽の家で働く就業希望者が少なくなってきているとのことで、私の想定では、このような働きやすい職場であれば多くの就労希望者が応募されると安易に考えていました。実際は最近は各地に障がい者就労施設が出来ており、近隣であれば働きたいが、あえて遠くに引っ越してまで太陽の家で働く人は減ってきており、法人から積極的に支援学校などを回り求人活動をしているそうです。その反面、従業員、施設利用者の高齢化が進んでおり、身体の状態を悪化させない工夫として健康サポートセンターを設置し健康維持を工夫されています。このように社会の変化と共に課題が変化しているようです。
また一般就労への移行事業が多くなってきているが、受け入れ先の企業数が足りないとのことで、まだまだ世間一般での障がい者雇用への理解は道半ばとの印象を受けました。そのような理解のない人々に一度は太陽の家を見学してもらいたいと強く願います。と同時に、障がい者と仕事を取り合うような思考はやめて、健常者は今まで以上にレベルの高い仕事をするように努力すべきであると感じました。
支援学校や障がい者の親に対して期待することを質問しました。学校では座学や最低限の事は学校で教えてもらいたい。また教育の方法を太陽の家での方法を先生方に教えているそうです。学校や親御さんには現場を見に来てもらいたいと強く願っておられました。「出来ない」ではなく「出来るようにするにはどうするか」を現場を見て一緒に考えることが出来れば就労への可能性が広がる、とのメッセージを頂きました。
隣接するスーパーマーケット「サンストア」も見学しました。障がい者の皆さんが働き、顧客も太陽の家で働く方々と近隣住民が利用されています。日本で初めて、車いすの従業員がレジとして働くようになったそうです。商品陳列も車いすの方が使いやすい高さと角度においてあり、動きやすい適度な広さの通路が確保されていました。店員が商品を陳列しやすいように1ケースごとに置ける工夫も見てとれ、スムーズに仕事をされています。何より様々な障がいを持った方が店内にいること自体が普通として違和感なく受け入れられている雰囲気と様子に、変な表現となるかもしれませんが近未来を見るような印象を受けました。
岐阜県在住の私は先にオムロン京都太陽を聞いており、この見学会があるまで本部が九州にあることも知りませんでした。想定している以上の現場を目の当たりにし、仕事ができる環境を用意すれば多くの人々が働ける、障がい者の就労への可能性を今まで以上に感じられました。これは中村博士の医師である視点で労働と障害者を科学的に分析し、改善実行されている部分が多くあり、その姿勢が今に引き継がれています。就労支援施設や支援学校の多くも太陽の家での智慧を今まで以上に学ぶ機会があれば、中村博士の想像した世界が実現に近づくように思いました。
今回は訪問させていただき有難うございました。