株式会社障がい者つくし更生会様

訪問日:2019年9月5日

福岡県大野城市にある株式会社障がい者つくし更生会様へ訪問しました。

「株式会社」と「障がい者」が会社名にあること自体、障がい者の労働と会社経営による経済活動での自立が一般的であるとは言えない日本の中で、特異な社名である印象からインパクトがあります。更生にも「生き返る」の意味があり、これもまた一つの狙いなのでしょうか、社会における自社の立ち位置を明確に表し、堂々と宣言しているように見えます。

事業内容は家庭や企業から出たゴミの処理にはリサイクルがあり、中間処理があり、最終処理の後に埋め立てる一連の作業の中での「不燃性一般廃棄物中間処理施設運転管理等を行う会社 」です。会社は近隣に他の会社や住宅がある綺麗な街路樹が植わる道路の通りにあり、一般的な廃棄物処理の汚れと臭いのイメージからは想像もつかない立地と、無臭できれいな道路、建物となっています。敷地内にもゴミは落ちていませんでした。徹底されています。

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専務取締役の那波和夫様から会社説明を会議室でのお話と施設を回りながら詳しく説明していただきました。

施設内の見学では、缶やビン、ペットボトルやプラスチック容器の選別をベルトコンベアが動く中、従業員がひとつひとつ手作業で行う様子を拝見しました。色付きガラスや耐熱性ガラスなど素人ではわからない分別を一瞬のうちに判断して選び取り出す様子に、簡単な仕事ではないことは十分にわかりました。これを障がい者つくし更生会では主に障害者の方々が行なっているのです。

従業員の構成として総数37名中障害者は32名、健常者5名の法定雇用率102.7%を誇る株式会社です。一般企業である以上、利益を出すのは当然であり、同社は大野城市からの委託を受け、昭和60年から現在まで仕事の質の高さで高い評価を得て、継続して委託を受け続け、黒字経営を続けておられます。35周年を迎えられたとのこと、おめでとうございます。説明の受けた部屋に掲げられていた35周年メッセージの言葉の作り方も1年かけて従業員の想いを形にされていると聞き、感情を大切にする象徴として見ました。

委託を受け、建物や機械を市からの借り物として大切に扱うよう従業員に伝え続けており、物を大切にする姿勢と、丁寧な仕事をする教育としての意味も含め、その意味が行動に浸透しています。その結果としてきれいな状態での建物や、汚れの無い通路、25年使い続けてきた機械をメンテナンスする業者からの誉め言葉「この機械をこれだけ使い続けている状態として絶品です」に形となって繋がっています。他社の施設では起こる爆発事故もゼロ件と自慢されており、それが従業員にフィードバックされ伝えられることで一人一人の日常の業務との意識付けになり、やりがいになっている好循環を見ることが出来ました。更に機械を長持ちさせることが出来る評価が市役所に対してのPRポイントとなり、委託の継続につながる点も重要です。

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このように、この業界では「『こまごま』としたものを『コツコツ』と継続する」ことが性質として合っており、これは障がい者の雇用と労働との質に合っており、性質の親和性と、障がい者でも当然に仕事できることを実現し、さらに仕事と従業員の人として職業人として向上させる努力が同業他社との大きな差別化につながっている要因の一つであるようです。

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同社の使命として「障がいがあっても物心両面の環境が整えば一人前の仕事ができる。障がい者と健常者は一体となれる。それを証明し伝えること。」とあり、まさにその使命を体現してると言って良いと思います。

障害者に働いてもらう以上、健常者よりできないことが多いのが当然です。様々な障害に合わせて仕事ができるようにすること。その中には本人の働こうとする意志も含まれています。これについて那波専務は従業員の言動によって望ましくない現実が生み出された時、その事実をもとに、その意味と理由を本人に理解してもらい、自分の言動の基である自分自身を理解してもらい、以前とは違う判断を本人に下してもらって、納得を得て、前を向いて新しい現実へと向かえることが出来るようにじっくりと話を聞き、提案し、合意を得る話し合いをされていました。これは非常に丁寧であると同時に、この丁寧さでないと思考と行動を変化させることはできないと考えられます。その意味で教育論の根本を教えていただきました。またこれは健常者の従業員であっても同じであり、私が普段お話を聞く、経営がうまくいっていない中小企業の経営者との大きな違いであると痛感しました。

ある従業員の方に分別の説明をしていただきました。とても分かりやすく説明していただいたこの方も後年性の知的障がいがあるかたで、以前、見学者への説明を担当するように指示したところ「できません」と拒否されたが、話をじっくり聞くと「やったことがないからできません」であると分かり、本人の言葉を鵜吞みにせず、相手との関係性をもって「やったことがないけど、やれますか?」に変化し「やってみる」になり、現在は「私の仕事」として自ら前に出られるようになったお話がありました。また仕事出来るようになり、自分自身への肯定感とご両親への許し(親にも知らないことがある、だから上手くいかないこともあったとの理解)から、家庭内暴力が無くなったエピソードを聞き「働くことで出来ることの視野」を広げていただけた想いです。

今の状態に至るまでにどのような苦労工夫があったのでしょうか。那波様は「自分がこの会社に入ったからこそ、この会社だからこそ自分が気づけたことが多くある」として障害者雇用中心として会社経営の中で、好循環が進むにつれて、良い出来事が起きるにつれて、多くの気づきを得たとお話しされました。見つめるべきは会社の外ではなく内側、相手ではなく自分であり、相手を理解することの大切さと、逆に自分が相手を理解できなかったことの気づきから、会社を良くするために次の一手を進めて行くことであり、その実践を聞くにつれて「実務家」の凄さを知りました。そして「気付き」に関して入社した事への感謝を述べられていました。この姿勢が世間に「いい会社」として認知されている現在も謙虚な姿勢で経営をされている人格を表しているように感じ尊敬します。大変だった出来事と良くなった時の気付き一つ一つを聞くとお時間が無くなってしまうので聞けませんでしたが、何らかの形で知ることが出来れば、多くの人々の貴重な学びになるように思います。

大変だった時に会社経営の中で経営者は相談者がいることも必要ですが、一人で悩み考え、現場での気づきを得て、それを基にまた会社を良くしていこうとする努力の繰り返しをされており、その御苦労がお話の背後に見え隠れするように感じました。また那波専務のお話しを聞くにつれて、一人の経営者としての面と、私が理想とする経営コンサルタントとしての視点を感じ、教育者としての姿勢を学ぶことができました。その意味で私は自分が関わる会社へのコンサルティングに応用できる学びを得ることが出来たと考えています。

最後に、見学者の中には過去の訪問から比較して会社の成長、従業員の成長が見受けられるとお話しされる方もいたので、またいつの日か再訪する時を楽しみにしています。今回は本当にありがとうございました。

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(私の右が那波専務)