2019年6月19日に私の地元、岐阜県関市にある株式会社DAI様へ訪問しました。
この会社は、いわゆる障がい者雇用である就労継続支援A型とB型事業所を経営されています。訪問のきっかけは働き方改革関連法相談で来られた代表取締役の中島望様へのヒアリングで当社への興味を持ち、快く訪問の許可を頂いたのでした。

業務内容は障がい者雇用と一般企業で働けるような教育も含めた労働として、自社の畑での野菜栽培と工場での商品加工、地元企業からの委託を受けての労働、農家でのお手伝いを含めた労働をされています。健常者従業員10名、障がい者(従業員、利用者)30名と年々規模を大きくされています。

8年前の開業は中島様の父が現社長である娘の仕事を作る意味合いをもってスタートされましたが、その半年後に体調を崩され、想定されていなかったタイミングで現社長の中島望氏が経営を受け継ぐこととなりました。農業は苗を購入してから製品が売れるまでに長くて1年半ほどのタイムラグがあるため資金繰りの難しさも創業時にあり、そこからの苦労をサラリとお話になるところに、経営者としての強い意志を感じました。

当時は愛知県犬山市に本社を置いていましたが、事業規模の拡大と自社の経営方針に合う土地として岐阜県関市に本社を移動し現在に至っています。様々な出会いによって新天地を発見する中で、良い出会いによって現在があること、これからも従業員との出会いや一般企業へと卒業していく会社側との出会い、自社との出会いが良かったといってもらえるよう、それらを総合して企業理念「出逢いに感謝」があるようです。

障がい者の給料は一般的に最低賃金以下の許可を行政官庁から得て低額とする事業所が多い中、当社は最低賃金を守り一般労働者と同じになるよう努力されています。その意味で障がい者であることを理由とすることなく、労働者として働き報酬を得ることが出来るような仕組みを作ろうとされており、実際に近年、黒字経営として転換できるようになってきました。
DAI 20190618 121424 - 株式会社DAI様(もうすぐ「いい会社」見学) DAI 20190618 123050 - 株式会社DAI様(もうすぐ「いい会社」見学) DAI 20190618 121717 - 株式会社DAI様(もうすぐ「いい会社」見学)
以前は坂本光司先生の本を読んで会社の目的として努力していた時があったが、他社の取り組みなどを参考に見ると芯がブレて会社経営が定まらない状態であったため、敢えて他社を見ないようにしていた時期があり、その際に経営理念や就業規則などを定め、自らを見直すことでブレなくなったとおっしゃっていました。今年の目標「DAIを全国に」として外部への情報発信と、外からの情報吸収を挙げており、チームで芸部研修への出席や他社見学を行い、その報告と自社への活用までの発表をする取り組みが始まっており、「両利きの経営」の萌芽と今までの内省によっての思考錯誤、それによって組織文化・組織感情の安定までのプロセスがうかがえました。

情報発信として、また時代の「障がい者雇用と農業」の流行と相まって月に1回の頻度で新聞や雑誌の取材が来ており、近隣では実現していない最低賃金以上での報酬や経営状態の安定、特に他の親会社などがある同業他社と異なり独立した会社として就労継続施設事業を安定して経営している意味でも、注目に値し、今後も有名になっていく企業であると思われます。

他の取材では定量的な成果を求められるとのことで、年次有給休暇取得率は89%を例に、体を使い疲れて休むことが健康であることであり、特に障がい者の健康を見るうえで自身で自らをコントロールできるようになること、身体と精神の両方に良い影響があるとして、また農作物を作る体力や工夫に頭を使い、お客や知り合いから農作物が喜ばれる意味で「農業をやれば老人介護施設が少なくなる」との持論をお話されました。

その後、工場内を拝見しました。以前別の会社が重量物を扱う工場としていた建物を借りて使用しており、農作物の加工から出荷を手作業で行い、また黒にんにくの熟成用機械を入れています。従業員と利用者の方々は黙々と真剣な様子で仕事に取り組まれています。その他、他企業からの依頼を受けてスーパーの商品の値段シールの印刷などをしていました。現在、機械や部屋の増設と移動のため物が多く雑然とした状況であったため、整理整頓した際には再度拝見したいと思います。転倒や腰痛に気を付けていただきたい。

現場で困ることとして人間関係が半数以上を占めており、障がい者の場合は特に困りごとを周囲が排除してくれる環境で育っているため、上手に他者との付き合うことに慣れていない人が多く、将来一般企業へと就職する中で、他者と上手く付き合えるように、相談に乗ったり助言をしながら自ら解決できるようにと時間を掛けて学んでもらっているそうです。

離職率への質問もしましたが、昨年の離職者は7名で理由は一般企業への就職であるとして、目的に合った展開であり、また一般企業への就職後も連絡を取り合い、互いの距離を少しずつ離れる形をしており、これも就職後の支援として意味のある姿勢です。

会社のターニングポイントについて聞きました。
一つは仕事依頼を受けていた農家さんが経営不振や後継者不足で突然に近い形で廃業される事実を目の当たりにしたとき、他者依存の現状を痛感し、経営安定のために農業部門のほとんどをいったん白紙にして、自社方針に合う形にやり直したとのこと。
また、最後に立ち話で出てきたお話として、赤字の状態から黒字経営へと変わる際には自然と変化したわけでは無く、具体的に意識して変えたものがあるとして、曖昧であった人と仕事の役割分担による組織化と、担当者によって数字を作り実現せてもらうようにした自律化、採用を含めた適材適所の配置、を教えてもらいました。

特に、適材適所については中島氏が心理学を学んできた中で職務内容と従業員個人の能力性格の適正についてのマッチング手法を自ら作り、自社で実行したところ、これが見事に的中しており、マネジメントが正確に進む、とのことで、これが私にとって非常に魅力的な内容であったため、他者へのコンサルティング手法の完成とプレゼンの用意を期待し、今後も双方にとって良い関係が結べればとの期待をもっています。

さらに「いい会社」研究会の紹介をさせていただいたところ、勉強会に参加したいと興味を持っていただいたので、今後は良い縁があれば、と期待しています。

まとめとして、将来、自社製品のブランド化などによって売り上げが安定し、助成金等に頼らず、賃貸ではなく自社の土地の保有も含め財務が安定し、事業の継続の確率が高くなったときに「いい会社」になるとして、全体的に今後の発展が期待される「もうすぐいい会社」であると思います。

今回はありがとうございました。