平成26年10月3日にMランド(益田ドライビングスクール)へ訪問させていただきました。
まずは訪問までの流れです。少々山の方へ入ったかな?と思ったころにMランドが見えてきました。まずは「世界一綺麗な駐車」の文字と綺麗に整列した車が目に入りました。この時点ですでに普通の自動車教習所とは違うと予感させられます。その横では新しい建物が建設中で、後で知ることですが、ここへ学びに来る外国人向けの寮と交流施設でした。この時点でMランドの中に入っていたと言えます。
Mランドのある島根県益田市の人口は平成26年8月末現在で49,442人であり、立地的にも山にあり、競合他社と比べても良い場所にあるとは言えません。しかし生徒が年間6,000人やってきます。遠くの都道府県からやってくるのです。そのほとんどが口コミなのです。ここにこの会社の凄さがあります。
入ってすぐに敷地内の山の中腹に「愛をありがとう、君のことは忘れない」とあり建物には「氣魄(きはく)」の大きな文字がありました。白い杭には「美しくなりたく候」など書かれており、いたるところに経営者の方の想いが詰まった言葉があります。多くの言葉の中で、一つでも心に大きく響くものがあればよいと考えておられるのでしょう。言葉は人を変える力があります。
敷地内を歩くと赤い服を着た教官の方を中心として皆さんが快い挨拶をしてくださいました。生徒(ゲストと呼ばれていた)の方も挨拶してくださいます。『Mランドの唯一のルールは「挨拶」であり、挨拶で自分が変わり、世界が変わる。』と入口に書かれています。
挨拶が出来なかった若者が、この教習所で学んで帰ってくると挨拶が出来るようになっている話が書籍などで書かれており、受講者本人からの口コミでも広がり、地元のみならず遠くの都道府県から受講にやってきます。Mランドに期待するのは自動車の運転技術と免許書だけではなく、人としての成長でもあるのです。
総務部部長の椋木勇一さんと、その後、営業部部長 水津浩さんが対応してくださいました。椋木さんは見た目が厳しそうな方で、多少ぶっきらぼうな話し方をされていましたが、訪問の初めから最後まで付き合わせていただいて、いい人であると思う人柄を感じました。最後まで面倒を見てくれる先生、そんな印象を受けました。水津さんも、社内の実情を正直にお話されて、正直すぎるほどの人の好さを感じました。
通貨「Mマネー」の説明で施設内のコンビニを拝見しました。日本円ではなく「$」で書かれた商品値札を見て、不思議な感覚に襲われましたが、更にすごいのは朝の掃除やお茶室でのお茶をした際にマネーが渡されることです。Mランドの理念に合った行動をしたらお駄賃が出る、そんな形です。人として良い行動をしたら褒められる、とも言えるでしょう。更にはコンビニには店員はおらず、欲しいものを取ったら、箱にマネーを入れるだけです。無人販売なのです。都会の人などは驚きでしょう。様々な生徒が入校してくる中で、人を信じている姿勢を無人販売で示しているようです。こうして言葉に依らずメッセージを伝え続けているのでしょう。
茶室もあります。すでにドライビングスクールとは別の世界ですが、これも生徒に人として成長してもらう一つの施設です。車の運転技術だけを教わればよいのではない、使い方を間違えば凶器となる車を扱う人の心を育てる思想があるのだと分かりました。
敷地の中を歩く事が出来ました。Mランドの敷地は山も含まれており、運動不足の私は息を切らせながら歩きました。山に舗装された道も教習に使われるそうです。初心者には運転が難しい道に思われます。それもまた教育なのですね。
山には従業員が作ったアスレチックがありましたが「プロの業者が作ったわけではないので、あまり信じると危険です。」と椋木さんが言っていました。生徒が山で怪我する事もあるようですが、免許を取るような大人なので自己責任で遊んでもらっているようです。この辺りは少々気になるところでもあります。
創業者であり現在も代表取締役会長の小河二郎さんは自分の息子2人を後継者候補から外した話も聞きました。あまり具体的に聞きづらい話でしたが、経営が甘くなるとの理由と聞きました。経営の厳しさとそれをよく知る経営者の判断であろうと思います。現在はお孫さんが会社に入り、会長と毎日話をしながら経営と、その哲学について学んでおられるようです。現在91歳という会長の年齢を考えれば後継者の育成が急務である様子です。
自動車は使い方次第で便利な道具になり、凶器にもなります。使うのは人であるため人の心次第で大きく意味が変わってきます。Mランドでは運転技術や運転知識を伝えることのみならず、心の面も教育するよう努力されています。その志は正しいと思いますし、この学校を選ぶのは生徒より親御さんの方が多いでしょうから、それによって他の教習所との差別化が生まれ、少子化傾向にある日本で生徒数が減らない成績をあげられていると思われます。
そして最近の傾向である入校費用を下げる方向へと流れてゆく現状とは逆に、上記のサービス向上と大切な心を伝えることによって、値段の維持をされる方針は、今後の生き残るためには必要な戦略と言えるでしょう。
椋木さんは「心を教育しようなんて大それたことは考えていません、一番は運転できるようになってもらうことです。心の面は、ただ、そうなればいいな、という想いで接しています。」と仰っていましたが、やはり、他の教習所とは違うというのが私の感想です。私も教習所で学び運転免許を取得しましたが、Mランドのような思いやりは一切感じませんでした。そのため、Mランドの特殊性が良く分かります。
今後もゲストの心を育てる運営を続けてほしいと願います。今回は訪問させていただいてありがとうございました。