平成30年3月22日に岐阜県高山市のミチナル株式会社へ訪問しました。
当会社は高山の特産であるホウレン草の出荷前に捨ててしまう端材を「もったいない」と着目して農家から買い取り、加工して商品化し、販売までを行っています。
農家は捨てるはずだった端材を買い取ってもらえる。ミチナル社は安く材料を仕入れることが出来る。お客さんは高山の美味しいホウレン草を手軽に食べることが出来る。と「三方良し」を実現する新しいビジネスモデルを実現しており、非常に興味深く感じていました。
ただホームページなどを見ても、あまり詳細な情報は少なく、その意味で未知なる(ミチナル)会社という印象で訪問しました。
取締役の下畑様から会社説明をしていただきました。ほうれん草を扱っていて「畑」と名字が付いておられこと自体が不思議な縁であり興味深いと感じます。
ミチナル株式会社は古来から飛騨と美濃を結ぶ益田街道、国道41号線に並行して流れる宮川の向かい側にあります。
地図で調べるとミチナル様の生みの親である山一商事様の名前が出てきます。こちらで調べると飛騨牛まんの製造や高山駅にあるカフェの経営などされており、ほうれん草加工品販売はこちらからのノウハウや販路を活用した事業であることが分かります。
このように単に「ほうれん草の端材を活用しよう」とか「三方良しだから」といった発想だけではなく、山菜加工品の売り上げが減少していく現実と合わせ、ソロバンをはじいた戦略が見え隠れしています。
ほうれん草を加工する工場を森腰工場長の説明を受けながら見学しました。
まずはじめに異物や菌の混入を防ぐために、我々も防止やマスク、服、長靴を装着し、丹念に手洗いをし、エアーシャワーを通り、厳重に守られた工場を拝見しました。
端材という、基本的に捨てるはずの材料を扱いことや、加工した製品は水洗いなどせずに使用できる食品であるため、特に土やゴミが商品に残ることは絶対に避ける必要があるとのことで、徹底的にほうれん草を洗い、異物を取り除きます。その徹底ぶりは国外の特別注文の機械を使っている部分にも表れていました。
また、ホウレン草の異物を取り除く過程で大量の水を使います。住宅地ではないため水道水の管が来ておらず、引いてくるためには億単位の費用が必要とのことで、水道水はあきらめ、昔からある井戸水(地下水)を汲み上げて使用しているそうです。水の確保とその大切さを実感されている様子でした。
また、使用した水は川へと流すことになるのですが、有害物質などを使用していないため無害である点と、立地的に下流に住宅が4軒ほどしかない点もあり、地域に配慮した形となっています。
会社説明の際に障がい者雇用についても聞きました。
ごく普通に雇用されている様子であり、採用した後に「個人ごとに良いところがある。その人に合わせて働けるようにする」として、人に合わせて役割を作り配置する工夫をされていました。
また下畑様から従業員への思いとして「従業員には社会人として一人前になるようになってもらいたい」との言葉がありました。「いい会社」見学で訪問した会社でよく聞く言葉です。自社の仕事だけ出来る従業員ではなく、一人の人としての成長を願う姿勢は従業員の枠に収まらない広い視野と人の幸せを本当に願っているからこその言葉であると思います。
その他、従業員が離職の意思を示した時も「次を見つけてから辞めるように」と、従業員の今後も思いやる姿勢は、やはり効率化では示せない「人を大切にする」会社であると感じました。
以上をまとめると「新規事業・創業の好事例」として見ることができます。
自社の衰退事業(商品)の弱みと強み(財産)を理解し、他社に真似できない方法で市場参入する。良く考えられています。
今後の課題として財務の安定が求められています。
機材の購入は十分揃ったとして、安定した収益を目指すために、安定的な生産、機械の稼働率の向上、つまりは材料であるホウレン草の安定的な仕入れを工夫する必要があります。お話によれば冷凍保管を考えている最中だそうで、これで減価償却費の増額は厳しいように見受けられるため、端材の仕入れを季節がずれる関東や関東の優良な生産者から安価な輸送費で集められる工夫を考えるほうが良いのかもしれません。販売ルートに関して飽和しているかどうかは聞いていませんが、まだまだ供給量が増えても大丈夫なお話だったように記憶しています。
もう一点の課題として雇用があります。
従業員の新規採用が難しいそうで、賃金額を多少上げても求職者が現れないそうです。
私としては、ミチナル株式会社の知名度が上がり、創業の理念と、三方良しの商売の実際である皆が喜ぶ仕組みとその様子、障がい者雇用も含めた働きやすい労働環境を、多くの人が知った時に「ミチナルだから働きたい」と来てくれる人がたくさん増えてくるように思います。継続雇用など雇用に関し方向性正しいと感じています。あとはPRの工夫なのではないでしょうか。財務の安定による人件費の向上も頑張っていただけると素晴らしいと思います。
法人設立からまだ3年とスタートしたばかりのミチナル様の5年後10年後の安定した「いい会社」の姿を楽しみにしています。
最後にお土産もいただきました。(幸せのほうれん草カレー:ベジタブルドライカレー)
今回は貴重なお時間をありがとうございました。