平成30年3月22日、岐阜県高山市の株式会社和井田製作所様へ訪問しました。
当企業は高山市で初の上場企業であり、高山という立地的に恵まれているとは言えない場所に居を構え、着実に成長されている企業として興味がありました。
訪問時間に自動車で敷地内に入った時に、既に従業員の方が入り口で我々を待っていてくださった時点で私は恐縮し、やはり一般的な会社とは違う予感がありました。
会社説明を受ける場所では和井田会長兼社長、森下取締役から大勢の方々が出席され、会長ご自身で説明をされたことに、これもまた恐縮いたしました。我々「いい会社」研究会会長の牧野氏の影響が大きいとは思いますが、それでも我々、知名度もなく、いい会社を研究するという、一見怪しい団体を受け入れてくださる姿勢は、人の縁を大切にすることや会社の懐の深さを感じます。
工場内を見学しました。
私は社会保険労務士になる以前、工場で工作機械の部品を作る仕事をしていたため、仕事内容が良く分かり、また懐かしく感じました。ただ「キサゲ」技術は初めて見ることが出来ました。以前から知っていましたが、その職人技を直に見ることが出来て感動しました。
金属面の最高度の高精度加工は未だに人間の手でしかできません。この高い精度があるからこそ工作機械の加工精度が高くなるわけです。機械では人間に勝てない領域があるため、職人の熟練度により付加価値が高まります。
他社では、このような技術を使わない方向に進むところもあるそうですが、和井田製作所では、これを自社の強みとして今後も続ける方針です。人という不安定な要素を避ければ一定の精度と経営的安定はあるかもしれません。しかしその反対に人の可能性を追求した先に他社が真似をできない技術・製品・会社経営があり、それは人による要素を避けた企業よりも確実に優位に立て、生き残る可能性が高まります。
100年続く企業を見座されている当社のように、会社の目的の一つに継続を挙げるのであれば、長期的な視点に立つべきですし、仮に現在は多少不安定であっても自社の強みを強化しグローバルニッチに進むのが中小企業の道であると考えられます。
人が幸せになる「いい会社」を目指す意味でも、人による可能性を追求する面からも、従業員を大切にするのは必然となります。和井田会長の「自社は従業員の顔が分かる会社」「従業員とその家族を家族として考えている」の言葉からも良く分かります。
障がい者雇用についても担当者のお話として「雇用しないように逃げようと決めれば徹底的に逃げるが、雇用しようと決めたら本気でやる。として雇用を始めた」と正直に話をされました。そして「本気でやると分かると、時間を猶予して待ってもらえる社風がある」とのことで、障がい者雇用スタート時の難しさと試行錯誤は想像できますが、それを周囲は見守る社風は、これも素晴らしい強みであると思います。
そして、障がい者雇用による教育効果が一番高かったのは障がい者ではなく、周りの従業員、会社全体であったとのことで、思いやり・共同社会としての理解が深まり、仕事の効率化にも効果があったとのことです。組織感情に好影響を与える大切さがわかります。
高山で経営を続けられている理由の一つに、先代経営者のお話「スイスのような水と空気がきれいな場所にはものづくりのための健全な精神が宿る」との内容の言葉を大切にされていました。
高山は古くから飛騨の匠の町(国)とされ、大工や家具などの職人が多い地域です。私も高山の公園で熱心に大工道具のカンナの歯を研いでいる若者たちを見たことがありますが、地域の文化としてコツコツと技を磨く気質があるように思います。このような人材を採用できる地域である、という意味だけでも高山にいる意味はあるように思います。
沿革にあったように、東京に本社があった過去がありながら、高山に来られた理由の一つには東京でその他大勢に埋もれるより、地方にあって「いい会社」としての確固たる地位を築き上げた方が、人材の確保、そして地理的理由から優秀な人材の流出を防ぐことが出来、また高山の気質も踏まえて、うまく機能されている様子がうかがえました。他の工場の集積地帯に雪深い場所が発展しているのも同じ意味合いであると考えます。
精密機械を作るメーカーを外から想像すると、人は機械の一部のように働く会社を想像しますが、実際には人が人らしく誇りを持って働く職場であることが分かりました。とても大切なことを知りました。
最後に訪問前の見学会の日程調整や見学内容についての連絡のやり取りでお世話になった経営企画部企画課の松嶋様にも感謝申し上げます。ありがとうございました。