平成27年5月23日訪問

コーケン工業株式会社は静岡県磐田市にあります。訪問日は良く晴れた日で浜名湖を眺めながら見学地まで移動しました。目的地に近づくにつれて平地が多くなり、田畑と住宅地と会社や工場が均等に配置されたような穏やかな地域になりました。私の住む山ばかりで平地が少ない岐阜県民からすると海もとても近く、羨ましい環境です。

 

コーケン工業は各種パイプの製造販売をされている会社で、従業員260名、派遣を含めて300名の規模の会社です。

特筆すべきは定年制を設けず、働けるまで働いてもらう雇用をされていることで、結果として現状60歳代の従業員が全体の25%、70代が9%、最高齢89歳の従業員が現役で働いています。

また障がい者雇用率は4,87%と法定雇用率を大きく上回っています。

 

会社へ訪問すると従業員が笑顔で出迎えてくださり、大きなテレビ画面をウェルカムボード代わりされて「いい会社」研究会の名前を出してくださっていました。

村松会長、飯尾社長ら10人近くの皆様に出席していただきながら会社説明を受けました。我々の為にこれだけの人数を割いているということは、それだけ業務の時間を止めていることになるので、申し訳ない気持ちもあり感謝いたします。

後で社長にお聞きしたところ「会社を見学してもらえると、会社説明や工場内の案内に若い従業員にやってもらうことで、従業員の経験になる。現場の従業員も見学をされて自分の姿を見られることで刺激になっている。人はやはり注目されることが好きで、褒められることが好きだから、見学してもらうと良い姿を見せようと頑張るし、普段の自分を客観的に見るから、とても良いと思っている。見学してもらうと従業員の成長の良い機会ととらえている。」と聞きました。特に製造業だと外部の人間と触れ合う機会は少ないと思いますし、我々のような「いい会社」と聞いて来た人たちの存在はそれ自体で従業員の賞賛になるのではないかと思います。そう考えると会社は他社の見学を積極的に行うほうが良いと考えます。

会長も「うちには隠すものはないから、撮影も録音も何でもしていってくれ」と許可を出していただきました。私も何社か「いい会社」見学をさせていただいていますが、不思議なことに、どの会社も「隠すようなものもない、企業秘密のようなものもない」とおっしゃいます。優れた経営をされている会社には何か魔法の杖があるような特別なものがあるから出来ると心のどこかに持っている前提は、こうして見学をするたびに否定され、ごく普通の働く場所に普通の人が働いている現場がある事実を知るだけでも見学は非常に良い経験だと思います。

IMGP4524 - コーケン工業株式会社 様 IMGP4533 - コーケン工業株式会社 様

高齢者雇用についてお聞きすると、不況の際に労働者不足になり、過去には外国人労働者を雇用したこともあったが、良い結果が出なかった。苦渋の策として高齢者向けの求人広告を出したところ、多くの求職者が来たので働ける人に働いてもらったのがきっかけとなっているそうです。高齢者が障がい者や新入社員の若い人を「寄ってたかって」孫のように大切にし、育ててくれることもあり、「高齢者は日本語も通じ、良識を持っている」という事実も再確認し、今では「高齢者をあてにしている」と表現されました。

誰でもそうですが、あてにしている、期待されている状態は人にとって重要で「あてにされる喜び」がこの会社で働く高齢者にはある、ということです。会長の言葉では「年寄りも褒めて伸ばせ」と表現されていました。

高齢者ならだれでもよいわけではなく「年を食ったのと、歳を重ねた人は違う」という表現で、人を見て採用されている様子も見受けられました。

工場内を見学すると女性の工員も多く、若い女性も多く見受けられました。工場だからという理由で、男性ばかりの会社も多いのですが、ここは違います。新卒採用活動の際に若い従業員に就職説明会で前面に出てもらって話をする方法に変えたところ、求職者が増えたとのことで、これが影響しているのではないかと思います。

一般的な考え方ならば高齢者雇用・障がい者雇用が出来るのは会社に余裕があるからと考えてしまうところですが、コーケン工業ではすべての労働者が良い影響を与え合って総合して現状が出来上がっている様子です。最近言われているようなダイバーシティ(多様性)を持った労働環境が良い、の考え方は既にこの会社では当たり前に実践されています。

工場を見学した時に感じた第一印象は「気持ちが良い」です。通路を広くとっており、冶具などの道具置き場の一つ一つも歩きやすく幅を取って有り、広い工場を広く使っていました。 物を置こうと思えばもっと置けるはずですが、高齢者もいらっしゃるからか歩きやすさ、動きやすさを優先されています。この点を飯尾社長に質問したところ「顧客の求める製品を製造しやすい形に配置している。」とのことで、変化に合わせて柔軟に設備のレイアウトを変更してきたようでした。

「これが出来ると星がつく」業務の質を高める個人の星取表があり、これはノルマとかではなく、本人のチャレンジ精神を尊重するための表であるとの説明があり、仕事の方向合わせを上手にされています。

食堂の「新入社員用テーブル」も先輩方の間に入りづらい様子から配慮されているとのことで、ちょっとした部分の配慮がされ、これが働きやすさにつながると思いました。

 

製造業として受注から納品まで一括生産の工夫などもありますが、やはり人に対する部分が会社の強みとなっており、現在の状態となるにはかなりの試行錯誤があったと想像します。それでも正しいと思える方向へとブレずに進まれた、その姿勢が原点にあると確認しました。

 

コーケン工業の皆様には見学をさせていただき、感謝申し上げます。

会長の「いつでも来て良い」とのお言葉に甘えて、また訪問させていただきたいと思います。その際には、宜しくお願い致します。

コーケン工業の皆様、ありがとうございました。