平成26年9月10日訪問

一般的に倉庫を想像すると、照明も暗く、従業員の表情も無表情な会社を想像しますが、LFC様の倉庫内は明るく、人の表情も明るく真剣でした。

毎朝の1時間近い朝礼に参加しました。毎月踊りが変わるダンスで体をほぐし頭も柔らかくしてから、経営理念、基本方針などを皆で唱和します。ハッピー体操を従業員と共に行いました。この体操は沖縄教育出版で行っていたことを思い出しました。良い取り組みは遠く離れていても関係なく情報が届き根付くのですね。

この体操をすると、日本では人と手をつなぐ文化は無いため、相手に急に接近されるのに戸惑いがありますが相手の事を身近に感じます。女性の多い職場に似合っていると思います。男性でも良いですが取り入れる際には、なかなか初めは難しそうです。私はとても良いと思います。

いつでも手元に置いておける手帳サイズの経営方針書によって、会社に関連する事項で気になった時にはすぐに確認する事が出来るようになっています。教えても「人は忘れる」事実を素直に認め、何度でも繰り返し教え、目につくようにする工夫の一つの結晶が手帳サイズになっているのでしょう。

今回従業員さんにお話を聞く事が出来ませんでしたが、この状況から考えるとクレドや経営方針のいくつかは暗記されているように見受けられます。

多くの会社がコミュニケーションの大切さを知りながら、そのための十分な時間を取らず、もしくは十分取れていると勘違いし、取れていないがために多くの損失を被っている反面、LFC様は非常に徹底されています。

朝礼の時間の従業員は何も生産していません。一面的に見ればコストと考えられますが、これが会社の原動力となっている自覚があっての取り組みであり、人の原理原則に合わせた合理的な手法の一つでしょう。

どこにでもありそうな倉庫を使った流通業でありながら5年連続増収増益の裏には、当然ながら他社が行っていない付加価値を付ける行為(お直し、プレス、検品など)がありました。付加価値を付ける行為は他社が真似できない行為であり、それを実現できるのは良い環境もさることながら、日々成長する従業員あってのことです。一つの例として従業員の改善提案に対し評価し、他の部署がそれを真似ても(これを「パクリ」と呼ぶ)評価する。真似でも何でも良いから効率的に働けるように改善したら良い、その姿勢に柔軟で合理的な姿勢を感じます。

井上武社長にお会いできなかったのは残念でした。しかしご子息で常務取締役の井上剛典さんにお会いし、お話を聞く事が出来たので、今後のLFC様の将来について知る事が出来たとプラス思考で考えました。

「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の実行委員長賞を受賞する際に、剛典さんも壇上に上がり受賞したそうですが、その際に「自社はこの賞に値するような会社だろうか?」と自問自答したそうです。そして今後も「日本でいちばん大切に」されるような会社作りを目指す想いの再確認とされました。誠実で真摯な姿勢を持たれた方だと思います。

今回、会社内を案内していただいた粥川さんのお話も興味深く、『環境改善チェックに社長と役員の方が部署を見て評価するのですが、毎回厳しく評価されると社員のやる気が無くなるので、社長たちが見に来る前に(私が)先回りして「ちょっとここを直しておいた方がいいよ」と教えて直すこともあります。』と教えてもらいました。

新しい試みをする際、どのような素晴らしい考えのもと行うとしても、社長の想いをそのままダイレクトに従業員に伝えると、理想と現実、もしくは計画と現場が合わずに従業員には十分に浸透しなかったり、反発を受けてしまうことがあります。しかし、粥川さんのような方が経営者側と従業員側の間に入って、摺り合わせと言いますか、クッションの役割を担うことでトップの想いや計画が円滑に伝わり進むようになる様子を知る事が出来ました。

このような方は会社の中で縁の下の力持ちとして表に出ず、非常に重要な役割を果たされています。今後、粥川さんが退職された際に、粥川さんの役割を果たす次の方が用意できているように準備と育成をされていることでしょう。(粥川さんには申し訳ないですが。)

今までのいい会社見学会で素晴らしい経営者の方々のお話を聞くと「運」と「徳」という単語を使われることに気づきました。今回は井上剛典さんと粥川さんに「運と徳の定義は何でしょうか?」と尋ねる事が出来ました。お二人の意見は似ており「運は良いことをしようと前向きに続けていれば運は良くなる」「徳は身に付けるものではなく、身に付いてくるもの。従業員を幸せにしてから付いてくるものではないか?と考えている。」と素晴らしいお答えを頂きました。

お二人の定義の感覚が合っていることも、普段のコミュニケーションの賜物であり、言葉に出来なかったものを表現する深い共通言語の醸成と、普段の学習による成果を感じさせました。

私を含め今回の参加者の大半が開業した社会保険労務士だったのにもかかわらず、労働法や制度について質問しなかったのは(良くも悪くも)我々らしい所だと自己反省しました。ただ、この会社は労働法や制度の枠を考えさせることとは別の取り組みで会社を仕組化し、従業員を法律やそれに関わる不満で悩ませることなく過ごせる、働ける環境を整備しているのです。それはLFC様が目指している「社員が幸せになる会社」の一つの要素であると気づきました。

障害者雇用に積極的な点も挙げておかなければなりません。社員48名中9名、スタッフ(パート)84名中3名の合計12名が障害者の方ですが、「社会貢献などとは考えておらず、その人に自立してもらえるように、家族として接している」姿勢がまさに「いい会社」です。将来、障害者の方を主力として利益を上げられるような仕組みが出来る可能性を職場を見学しながら妄想しました。

今回は朝礼を中心に見学させていただきました。もし次回訪問する機会があるとしたら細かな改善内容や従業員へのインタビュー、新たな倉庫を見学したいと思います。

今回はありがとうございました。0 - LFC株式会社様