平成26年5月23日に「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 中小企業庁長官賞受賞を受賞された沢根スプリング株式会社様を訪問させていただきました。
「いい会社」を訪問させていただくと、必ずと言っていいほど私たち訪問者が到着する前に玄関先や駐車場まで社長さんや従業員の方が待っていて下さることです。そして沢根スプリング様は会社説明をする際に通された部屋の座る席に私の名前を書いた紙が置いてありました。見学者の一人ではなくて、私個人を迎えて頂いているようにうれしく思いました。「おもてなし」の言葉が流行していますが、それが実行されている事が初めから分かります。

説明の初めに企業のあるべき姿として「働く社員を幸せにする。企業の成長も利益も手段に過ぎない。」と言われ、やはりそうだと確信しました。そのために「小さくても輝きながら永続させること。」も普段から学んでいる内容と一致し、共通した価値観に共感しました。

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社長が給与明細の中に従業員へのメッセージを書いて同封したり、作文を従業員に書いてもらったり、会長の作文が本になり皆さんに読まれており、「文字にする」のは大切な思いを丁寧に伝え、残すうえで適しているようです。従業員も自分の書いた内容で自分を振り返ったり、自分の考えを整理できるのでしょう。

経営者として必要な感覚として「経営のバランス感覚」をあげられていました。会社の永続と従業員の幸せを両立出来るように経営する。秤にこの二つを乗せている選択も重要に思います。

「経営ビジョン2020」と銘打った長期計画書を従業員と半年かけて作成されたそうで、まず、従業員と将来を話し合い、計画作成に参加してもらうことで従業員は会社経営が他人事から自分の事としてみるようになってもらえるのでしょうし、遠くの大きな「あるべき姿、ありたい姿」を明確にして、そこへたどり着くためにどうすれば良いのかのステップをつくることで可能性を高める方法は今までも学んできましたが、本当に参考になります。

そこから1年の経営計画書による事前の検討があり、目標を立て実行する。綿密な手法で素晴らしいと思います。計画も会社の状況も全て従業員に伝える「オープン経営」で「説明義務」…義務とされているのが素晴らしい。会社が従業員を含めた皆のものであると同時に従業員に経営者と同じ視点を持ってもらえる、もらおうとするメッセージや従業員にモチベーションを与えられているように思います。

工場内を見学した際には、やはり「物が少ない」「すっきりしている」「床に書かれた線の枠の中にしっかり納まっている」のは、いい会社を見たときに共通する基本であると分かってきました。5Sですね。道具の置き場所に決まった道具が置かれており、机に置かれたペットボトルのお茶の置き場所までしっかりしているのを見ると5Sの中の「躾」がなされ、習慣化されているのが見受けられます。

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社長のお話にあった「製品の品質が良いのは当然となった。他社との差別化に納品までのスピードを業界最速にする。」その戦略を実現する為に製造現場には材料が置かれ、受注から発送までを一人で行える工夫があり、戦略が工場内の形を変える現場を見る事が出来て非常に参考になりました。原材料が別の倉庫にある普通の工場の概念が自分の中にもあったのですが、工場内の設備の位置や仕事のやり方などをもっと自由に設計して良い、良い事例を目の当たりにして頭が柔らかくなった気分です。

また、従業員が働く一定の場所にいない場面を何度か見る事が出来ました。どこかへ行って他の従業員と話し合ったりしているそうです。それについて注意されないそうです。普通の工場であれば生産性の低下を恐れて注意するところですが、場を離れている際に何かを得て戻ってきてくれることを期待し、実際にそうであるため社長も何も言わないそうです。また機械が止まっていても、それ自体を問題としないそうで、これで生産効率が上がるのであれば、工場の奥の深さをまだまだ私は知らないのでしょう。

「沢根スプリングの従業員はどんな従業員ですか?」と質問させていただきました。あってほしい姿や今の特徴をお話されるかと思いきや「一人一人違い、その人たちの経営への理解を得るために事前にビジョンを十分に伝える事が大切です。」とお答えいただきました。現状の話よりも、さらに先の「どうすれば将来、会社が良くなってゆくのか?」を常に考えてらっしゃるからこその言葉なのでしょう。常に先を考えている経営者の姿勢がそこにあるように思います。

お話の内容が理論的で合理的であり分かりやすく、自社の数字や世の中・業界の変動について敏感であり、更に人を知ろうとする姿勢に沢根社長が非常に勉強されていることが分かりました。会社が「いい会社」なのは偶然や運の良さだけではなく、努力されているからこそであることが分かります。

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海外への視察で日本にも機械部品での通信販売の時代が来ると見据え、他社より先にリスクを取って始めた面も起業家精神を持った素晴らしい決断です。一般的な二代目社長のイメージとは違い、経営者の資質として必要な要件を持たれていて、優れているように感じました。

帰りの車の中で通信販売の話から「必要と感じないと、大切なヒントが目の前にあっても気づかない。必要な知識を持っていないと、目の前で起こっている物事に興味を持てないで気付くことが少なくなるね。」と話し合いました。

我々「いい会社」の見学会のメンバーは沢根スプリング様に直接仕事を持ちかけるような人は多分居ないのですが、それでも見学を許可した理由として「社会へのお返し」とお答えいただきました。私も今回学ばせていただいた内容を基に何かを社会にお返しできるようにしたいと思います。

今回はありがとうございました。